単独猟が特に危険なのではないという話

『単独猟は危険』ぼくは単独猟オンリーですが、人に話すと結構言われます。
今回はそれについて少し書いてみました。





『どうして単独は危険なのですか?』





『周りに誰もいないから』


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とあるグループ猟メインの狩猟者はこんな理由をあげました。


『滑落してケガをして身動きが取れなくなったり、道に迷ったら大変』


『滑落するかも』
確かにソロで山を歩いていて滑落事故は怖いですね。しかし、それってソロだから起こる話でもなければ、グループ猟でもガケから落ちて打ちどころが悪ければ死にます。大切なのは遠回りしてでも事故を起こさないような安全なルートを選定して歩く気持ちの余裕ではないかと考えます。単独忍び猟は無線で急かされることもありません。マイペースに移動ができて『ちょっと危ないかも』と思ったら遠回りしてでもゆっくり移動ができます。

万が一滑落して足を骨折したとしても応急処置できる知識と最悪の場合ビバークする装備があれば一夜を越えて時間を掛けてでも自力で山を下りることはできるでしょう。




『道に迷うかも』
これは始めた頃かなり意識してましたね。ただGPSガジェットを携行するようになってからは自分の正確な位置や行動記録が残るのでその感覚はなくなりました。さらにGPSが壊れたらスマホを、スマホが沈黙したらコンパスを、コンパスだけでも帰れるように周辺の地図を事前に確認する。2重3重の準備と対策があってこその「大丈夫フツーに帰れる」です。逆に全く準備していないのであれば狩猟どころではありません。









『狩猟中のいろんな危険について』


『グループ猟には外圧がある』
学生時代にテスト中に見回りしている先生が自分の机の前で立ち止まってジーっと見られていた時にドキドキして手が止まったり気が散ったなど経験ありませんか?ぼくはありました。これが外圧です。 単独猟の場合はその外圧がありません。逆にグループ猟には多かれ少なかれあります。先輩に無線越しに怒鳴られたり、タツマまでの移動を急かされたりなんかがその外圧ですね。ゆるい所でも外したら笑われたりなんてのもあります。『怒られたくない』『笑われたくない』『この前外して迷惑を掛けたから』焦る気持ちは冷静な判断をする余裕を奪っていきます。『今度こそは絶対に』『笑ったやつを見返してやる』という気持ちは目を曇らせて引き金を軽くするかもしれません。

単独猟の場合は誰もいないのでその外圧がありません。撃つ場合もほとんどが棒立ちしている動物なのでゆっくりと狙う余裕があります。ルートの選定や歩くペースも急かされることはないので危険なルートを通ってショートカットすることもなく遠回りでも安全なルートを選定する余裕があります。




『グループ猟は人と銃の数が多い』
行く山にもよりますが、ぼくは昨シーズンと今シーズンで山の中で人と会ったのは1度だけでハンターではなくキャニオニング中のバックカントリーハイカーでした。グループ猟は単純にたくさん人がいてたくさん銃があります。自分の銃は自分で管理できますが、他人の銃は徹底管理できません。引き金を引くタイミングもバックストップの確認も撃つ対象もその人がやることです。慣れてない人よりも『大丈夫大丈夫、今まで大丈夫だったから今回も大丈夫』みたいなタイプの人がいると怖くて仕方がないです。訓練されている兵隊さんと違って射撃場にもほとんど行かない人、銃の扱いが危なっかしい人もたくさんいます。ぼくの完全な偏見ですが「人と銃の頭数は誤射事故の危険性と比例する」と思っています。





『猟犬の存在』

猟犬が地元民やペットに噛みついたという話もありますね。ぼくが聞いたことがある限りでこれはどうやって防げばよかったのか?と思った話は『犬がシカを追い立てて道路に飛び出したシカと車が接触事故を起こした』というケースです。猟犬は大切なパートナーですが、猟犬の存在がノーリスクかと言えばそうではないと考えています。人間でもトラブルを起こします、猟犬もまた少なからず何かしらトラブルを起こしてしまう可能性があります。飼い主の練度にもよります。テキトーに訓練した猟犬をフィールドに放つならなお事故に繋がる可能性は高いです。




『グループ猟や罠猟は"窮鼠"と対峙する』
野生動物はぼくの知る限り基本的に人間を恐れています。こちらに気が付けば逃げていきます。今まで山で見かけた動物が襲い掛かってきたことは一度もありません。しかし窮鼠猫を噛むとも言うように追い詰められた状況では動物も必死の抵抗、パニックになって襲ってくるケースはしばしばあります。市街地に迷い込んだイノシシがパニックになって通行人に襲い掛かるなどです。狩猟中の場合でもククリ罠に掛かったシカやイノシシは自分の足を失うことすら厭わない勢いで暴れまわります。先日は巻き狩中にイノシシに襲われた狩猟者が命を落としていますが、犬やセコに追い詰められている状況なら十分襲われる可能性はあるでしょう。実際に狩猟中に命を落としたり大ケガを負ってしまう噛み犬の話はしばしば聞きます。忍び猟は棒立ちの動物か逃げていく動物を撃ちます。動物には人間に気が付き逃げていく余裕があり、棒立ちでヘッドショットなら死んだことにも気づいていないでしょう。また単独の場合、ぼくは半矢にしてしまった場合絶命を待ちますし、長く苦しませたくないならもう1発撃ち込みます。わざわざナイフを使って止めたりなんてしません。ただ危ないだけです。大きなイノシシ等は動かなくなった後でも時間を置き、石ころや棒切れを投げて反応をうかがってから近づきます。単独忍び猟で窮鼠と対峙することはゼロに等しいと考えています。

YOUTUBEで猟犬を使って狩猟をされている狩猟者の動画がちらほら上がっていますよね。いきなりヤブからイノシシが飛び出してきてドカドカ撃ちこむ、猟犬が吠えて止めているイノシシに撃ちこむ、イノシシのすぐ後ろをシカが走っているのに(走っているかもしれないのに)撃ちこむ。そういったことは単独忍び猟ではありません。単独忍び猟の場合「動物と対峙する距離」が遠く、見た瞬間撃ち込むことも少ないです。単独忍び猟では「脅威に怯えてパニック状態の動物」と対峙することはほとんどマレです。

『狩猟中に起こった危険な体験ベスト3』ではぼくがイノシシに突進(イノシシが逃げた先にぼくがいただけでイノシシに認識されていたのかは不明)された話を書いています。窮鼠と対峙することはゼロに等しいですが、1度だけ経験しました。地形によっては自分とイノシシが1本道に閉じ込められてしまうのでケガに繋がる可能性があります。




『恐れは引き金を軽くする』
軍用ライフルにはセミオート、フルオート以外に「バースト」という射撃機能がある銃があります。経験の浅い兵士がパニックになってフルオートで無駄に弾を使ってしまうことを防ぐという目的でベトナム戦争の頃に考案運用されはじめたと聞きます。戦争ではありませんが、パニックになって引き金を引いてしまうということは狩猟でもありえない話ではないとぼくは考えます。目の前のヤブの中でガサガサと音を立てる"何か"に恐怖を感じてしまう人はいてもおかしくありません。『突然イノシシが飛び出して来たら』『違うとは思うけどクマだったら』そんな気持ちにさせられるかもしれません。 それがガサガサと大きな音を立てて突然こちらに向かってきそうな気配を出したらビックリして撃ち込んでしまうなんてことも十分可能性としてあるでしょう。それがイノシシだったらいいんですが、もし人だったらそこですべてが終わりますね。経験が浅い人だけの話ではありません。こういった状況で今までガサドンしてきた人は悪い意味で慣れています。慣れというのはある意味恐怖よりコントロールが難しいものではないでしょうか。ただのガサドン経験者で数だけやってきた狩猟者と正確に冷静な判断を下してきた経験を持つ狩猟者では「経験者」としての質が違うと思います。





『誤射』

忍び猟中に山の反対側から入った狩猟者に誤射されたとします。12番ライフルドスラッグでシカやイノシシを撃ったことがあるならどういう穴が開いてお腹の中がどうなっているかわかりますよね。止血帯で対処しやすい場所以外に命中した場合は高い確率で命を落とすのではないでしょうか?訓練されている専門職の人と違ってただの狩猟者は銃創に対する適切な応急処置を理解しているか?中には理解している人はいるでしょうが、ほとんどの人はわかっていないですし銃創に対処するファーストエイドキットを携行している狩猟者を見たことも聞いたこともありません。

12番スラッグで太ももを誤射されたとしましょう。そこは携帯電波の届かない山です。応急処置できる知識と装備を持った人がグループにいません。ロープと棒切れで縛る程度の応急処置を施し、血を流してパニック状態、もしくは意識を失いぐったりしている大の大人を山から降ろし、電波の届くところまで行ってレスキュー隊に連絡を取りドクターヘリが到着するまでの時間を想像してみてください。恐らくこの流れがイチバン遅いでしょう。仲間に無線で連絡を取り、GPSに表示されている座標を伝えて車で携帯電波の届くところまで移動してもらいドクターヘリを呼べば幾分か短縮できるでしょう。電波が届く山ならその場で連絡を飛ばします………それでも狩猟中の誤射事故のニュースってなんとなく『死亡』が多い気がしませんか。まともな応急処置ができないこと、ドクターヘリに乗せるまでの時間が掛かりすぎていると考えますし、シカに空いたスラッグの銃創を見れば自分に命中して助かるなんて思えません。

何が言いたいかというとスラッグで撃たれればその場に誰かいようがいまいが助かる確率はとても低いのではないかということです。グループ猟であっても単独で自分の足を吹っ飛ばしても同じです。






『単独忍び猟は人間関係のイザコザがない』
とあるベテラン狩猟者が言っていました


「一癖も二癖もある人が増えてみんな仲良く出来るわけがない」

「いいよ!おいで、おいで!ウチは誰でもWelcome!」そんな猟隊が長続きしたのを見たことがない」


グループが分裂して二つに分かれた
あの人が来るならオレは参加しない
あそこは俺たちの猟場

人間関係とは難しいモノです
単独忍び猟はその枠の外にいます
誰とも関りがないのでほとんどトラブルに巻き込まれることもありません

ぼくの場合、他の狩猟者との関りは射撃場で顔を合わせた時に雑談する程度

狩猟をしょうもない理由で嫌いになりたくないのです

今のところ、山と銃とバッジがあれば120%楽しめています

グループ猟をするとどうしても深い人間関係の中に身を置くことになります

それをリスクと呼ぶには大げさですが、人間関係が険悪になって~…という話もたびたび聞きます

これをどう考えるかはあなた次第です。








『単独忍び猟が特に危険というわけではない』



単独忍び猟が特に危険なのではありません。狩猟にはどんなスタイルであっても共通した危険やそのスタイルだけの危険など様々な危険があります。グループ猟だから安全というわけではないと考えています。


『単独忍び猟はリスク管理がしやすい』
管理するのは自分の行動のみです。装填のタイミング、ルートの選定、装備、発砲、すべて自己判断で行い、すべて自分の徹底管理下に置くことが可能です。

狩猟者はそれぞれの射撃や銃の扱いの練度、価値観、猟欲、危ない、危なくないの判断は人によって異なります。言ってできる人、できない人、注意を素直に聞く人、聞かない人、「大丈夫大丈夫」というだけの人、猟欲が強くマナーや法令を後回しにして「そんなんじゃ獲れない」という人、猟欲が強くても「安全第一だから」と大物を見送れる人などなど、様々ですが、単独忍び猟は自分だけなのでリスク管理がしやすいです。その場にあるすべての銃、グループなら人数分、単独なので自分だけの銃を管理すれば良いです。その日の行動もルートも時間も撃つタイミングも撃つ対象もすべて自分のペースに合わせて行えるので焦ったり急かされることもありません。さらに走り回ることもなくゆっくり移動するので走り回るスタイルの狩猟者に比べて多少荷物は多めに持って行ってもストレスは感じません。携行できる荷物が多い分準備や対策が取りやすいですね。

話は変わりますが、撃つタイミングをすべて先輩狩猟者に委ねてしまうのもあまりよくないと考えます。はじめて山で撃つ時に「ここはハンターマップは真っ白!バックストップある!日の出から時間かなり経過している!あれは間違いなくニホンジカのオスだ!撃つぞ!撃っていいよな!」などなどいろいろな考えが頭の中をめぐるでしょう。ぼくはそうでした。先輩狩猟者の「おう 撃っていいぞ」の一言は1人で撃つならば考える時間を吹っ飛ばして引き金を引かせてしまうかもしれません。 そこがガードレールの内側であったとしても、あのカモがよくわからないメスガモだったとしても「大丈夫 撃っていいよ」の一言を信じて新米は引き金を引いてしまうかもしれません。「いやいや、民家近いですし、アレ撃っていいカモですかね?」と何十年もやっている先輩に弾を装填した状態で聞き返すことが1年目の新米にできるでしょうか。できる人ならいいと思いますよ。「よし!大丈夫だ!最大のチャンス!絶対取るぞ!  ズドン!!」だとしたら上記のように撃つ寸前にたくさんいろいろ考えることはないかもしれません。その先輩がちゃんと考えて根拠を持って「大丈夫」と言うならいいですし、新米もその事を理解しているならいいのですが…。自分で考えて撃つことを理解していくべきだと思います。先輩から「撃っていいぞ」と言われて撃つのは撃っているのではなく、撃たされているのと同じです。撃つために考えましょう。難しいことはありません。狩猟教本通りにやればいいのです。丁寧にしっかり書いてあります。




まとめ


単独忍び猟はリスク管理が行いやすいというだけで他猟法より安全と言うわけではありません。冷静な判断を常に求められます。無謀な行動をとらずに、計画を立てて行動し、石橋を叩いて確認し、違和感を感じたら遠回りしてでも鉄橋を渡る気持ちの余裕を持って、転ばぬ先の杖を準備し、転んで折れた足に杖を添え木にしてでも山を下りるような装備と応用力が求められます。やれるだけのことをしっかりやって準備してから山に臨める人に単独忍び猟はオススメします。これから単独忍び猟をしたい人はトレッキングやハイキングで経験を積んでおくともっとスムーズに入り込めると思いますよ。危険を伴わないアウトドアレジャーはありません。バイクは事故、釣りは溺死、登山は遭難。目の前の危険を理解すること、上手に無理なく回避しながら行動した先に味わえるものをスリルと呼ぶのではないでしょうか。

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